伝える時のポイント -その 3/3-
その2では、ケーススタディーを使って、問題の捉え方をみてきました。今回が最終回です。
最初は日常的な「出来事の問題」でしたが、やり取りの対応を間違えると「人間関係の問題」
に発展していくことが分かったと思います。
では、私たちは、どうしたら、この簡単に発生する難しい問題に対処したら良いのでしょうか?もちろん日常的なモノの言い方によるところがあります。
では、人がモノを言うメカニズムですが、人は「刺激反応モデル」とも言われ、外部からの
刺激(情報、環境etc.)を内面で反応し、アウトプット(発言、文書etc.)しているわけです。
この内面の反応が、人によってパターンが変わります。または、その人が誰と接するかによっても変わります。
先のケーススタディーの中にも記載しましたが、大きく3パターンあります。
①攻撃タイプ
自分が正しい。自分の価値観で相手を責める、
追い詰める。対立が生じても、自分の正しさを
証明したい。
②オロオロタイプ
対立は避けたい。自分を悪く思われたくない、
嫌われたくない。仕方ないので、自分の中で我慢し、
事の問題を自分で巻き取る。
③ネチネチタイプ
嫌味や態度であらわす。どこかで、相手をとっち
めたい。全体を巻き込んで、相手に分からせてやる。
人は感情の生き物なので、感情のスイッチがあること自体は、自然なことです。感情が発生することを悪く思う必要は無いと思います。
むしろ「人間として当たり前」だと思います。
ただ、自分の感情のタイプが相手や場所、環境によって、どのパターンが出やすいか?知っておくと感情とのつき合い方が変わってくると思います。
例)上司にはオロオロタイプ、部下には攻撃タイプ、
他部署にはネチネチタイプ
会社では攻撃タイプ、家庭ではオロオロタイプ、
近所付きあいはネチネチなど
そして、もう一つ知って頂きたい事実があります。「言いづらいこと」を相手に話す背景には、
「その人を変えたい!」という欲求があります。
得てして人は、「自分は正しい」→「相手が変わるべき」と考えてしまいがち。
しかし、事実としては、「人は変えられない!」です。その人が自分で「変わろう」と思わない限り、他人が
「人を変えることは出来ない」ということを前提に考えると、気持ちが楽になれると思います。
さて、先ほどの3タイプは感情の自然な反応だったわけです。成り行きでした。
今回の「言いづらいことを伝える」場面では、自分はどういった反応の仕方を選べるのか?
または、どういう反応の仕方を選びたいのか? つまるところ、自分はどうありたいか? だと思います。
感情に任せて、つい言ってしまうことが、普通は多いと思います。ここで一旦立ち止まり
考えてみたいこととして「つい言ってしまうことで、本当に中長期的な信頼関係は築けるだろうか?」という事です。
こういった時に、「自分の成長のためにも、相手のためにも、いつもと違う対応の選択肢を持ってみませんか?」というのが、私からの提案です。
どういったことかと言うと、
「結果も出せて、相手との信頼関係も良くなる!」
そんなことを目指せたら、面白くありませんか?
そのためのポイントを2つ紹介したいと思います。
どうですか、興味ありますか?
知りたい方は、以下を読み進めてみて下さい!
それでは、前回の「ケーススタディーその1」から「その3」まで進んじゃった場面で「結果も出せて、相手との信頼関係も良くする」ためには、何を伝えたらいいでしょうか?
そのためには、最初は
■ ポイント1「自分が相手に何を伝えたいか、
主張の中身を整理」してみましょう。
1.事実と問題を伝える(ロジックで伝える)
・仕事の提出期限が守られていないこと(事実)
・こういったことが、繰り返しあること(事実)
・チーム全体のスケジュールに影響を与えてしまう(問題)
【NG】
・提出期限を守らないと、困るじゃないか!(感情)
・遅れる時があったら、連絡をするべきだろう!(正論)
・Aさんのせいで、みんなが迷惑をしているんだ!(嫌味)
2.自分の気持ちを開示する(感情を自分の責任で伝える)
・繰り返し期限が守られていないことを心配している
・全体のスケジュールに影響していることはまずいと思うよ
・期限を過ぎても、相談がないので、とても心配に思っています
・全体のスケジュールに影響が出ていて、私が困っているんです
☆自分の状況を理解してもらう。腹を割って話す姿勢だと伝わる。
【NG】
・約束の期限が過ぎても報告も無い。だから君はダメなんだよ!
・なんで、約束が守れないの?
・社会人として、報告するのは、当たり前だろう!
3.要望・提案を具体的に伝える
(抽象用語を取除き、5W1H的な具体性)
・これからは、毎週月曜日の午後一番に15分、仕事の進捗に
ついて、一緒に確認をすることで、遅れを取り戻したいと思って
いるんだけど、どうかな?
その時にAさんが困っていることもあったら、一緒に解決
していこうと思っているんだけど、どうかな?
【NG】
・じゃー、次回からは「ちゃんとやってね」
「これからは、しっかり報告してね」
☆相手を傷つけたくないため、オブラートに包んだ抽象的に
伝えると、相手は「何を言っているのか?」
「どうしたらいいのか?」分からないまま、納得できずに
悩みを深めてしまう場合が多いです。
ここまでは、自分の思考の整理を明確にするということでもあります。現実、実際の場面では、
伝える相手は、さまざまな性格であったり、さまざまな価値観を持っていて、相手の抱える問題も、まちまちだと思います。
そこで、もう一つ!
■ポイント2「相手の事を理解」してみましょう。
コミュニケーションはキャッチボールと言われます。
自分の主張を一方的にするのでは無く、一つ一つの
ボールの大きさを相手と合わせて、双方で
受取ってもらえるようにするといいですよね。
相手が受け取れないような剛速球や変化球では無く、
相手の受け取れる優しい球で、そしてドッチボール
のような大きなボールを相手にぶつけにいく(責め)のでは
無いと思います。相手が受け取りやすく、
思いやりを持つ事が必要では無いでしょうか。
では、具体的に何をどうやって、
気を付けていったらいいのでしょうか?
●まずは、会話を肯定的なメッセージで始める。
おべんちゃらで、表面的な褒め言葉では無く、
日頃から相手を良く観察して具体的に相手への
感謝を冒頭に伝えることが大切だと思います。
「Aさん、いつも、誠実に対応してくれてありがとう。
昨日のミーティングでも正直な意見を言ってくれて、
ありがたかったよ。お疲れ様。」
【NG】
「Aさん、いつもよく頑張っているね」
(バックリ感が怖い。この後、何か言われそうな予感)
●相手の言い分を理解する(聞き方を気をつけないと、
相手は口を閉じてしまいます)
「報告のタイミングが分からなかったの
だろうか?・・・私が忙しそうにしていて、
声が掛けづらいことがあっただろうか・・・
それとも、何を聞いたらいいのか?
分かりづらいのかな・・・いろいろな事情が
あると思うんだけど、どこらへんなのか、
もし分かったら、教えてもらえる?」
この場合、小さなボールでAかなBかなCかな的な、
相手の気持ちを想像して歩み寄っていく姿勢を感じて
もらうことが大切だと思います。
【NG】(相手からは詰め口調に感じるような言い方)
・何で報告がなかったのかな?
・何か意見はある?
・どこが分からないのか? 教えてくれる?
・何か問題があるの?
(上記のような事が言語に出来なかったり、
分からないことが分からなかったりします。
相手に歩み寄って、相手の事をおもんばかり、
相手の代わりになって、一緒に言語にして
あげることが有効です)
●自分の責任も認める
(自分も、この問題の当事者で、一緒に解決する姿勢)
「仕事をお願いする時に、ひょっとしたら自分も
報告のタイミングを具体的に説明してこなかった
かも知れないよね。期限の前日までに報告してねと
言えば良かったよね。ごめんね。」
「また、Aさんにお願いした資料が全体の
スケジュールに影響を与えることを
ちゃんと説明してなかったよね。
こっちにも責任はあったかも知れないね。」
【NG】(どちらかが、完全に正しくて、どちらかが、
完全に間違っているという立ち位置をとると、
永遠に平行線になってしまいます)
・自分は完全に正しくて、あなたが間違っている。
・期限を守らないあなたが悪い
・報告してこないあなたが悪い
●最後の終わり方は、今後のフォローとさわやかな
空気感で終わる!
「お願いした仕事については、こっちからも、
また声を掛けるからね。これからもAさんの
協力は必要だし、一緒に頑張っていこうね!」
【NG】
・これだけ、説明したから、もう大丈夫だよね!
・これからは、ちゃんとやってくれるよね。
これまでの話は、実際は生身の人間を対象と
しているため、本当に難しいです。100点満点の対応が
出来ることは、ほぼほぼ無いことが多いのが現実です。
日頃の会話を通じて、信頼関係を、
どうやって積み上げていくか?
信頼の積み立てをコツコツ出来るか、
一発勝負でかたがつくものではないのが、
現実です。
「Aさんにも変わってもらうけど、
自分も変えていくよ」と相手に伝わること
が大切だと思います。自分も変えて行く
ことで、相手にも変わりたい
と気づいてもらえるといいですね。
最後に簡潔にフローをまとめたいと思います。
「言いづらいことを伝える」時に、感情的に
反応するパターン以外の選択肢として、
参考にして頂けたらと思います。
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スタート : 肯定的に始める
1.事実と問題を整理して話す
2.自分の気持ちを開示する
3.相手の言い分も理解する
4.自分の責任を認める
5.要望・提案を具体的に伝える
ゴール : さわやかな空気感で終わる
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